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【満員御礼! 応募締め切りました】「三浦移住学」第⑤期、開講します!
移住とは生き方を変える試みです。これからの生き方をあらためて考えようとしている方々の背中を押すことができればと願っています。
2024.01.11
2020.02.08
三浦・三崎に移住してきた人の物語を書き留めていく連載「漂着の人」。人がなにかを選択した姿は、はたから見れば意志的な行為に見える。けれども、その選択の背後にはたくさんの偶然が隠れていたりする。
思いがけず、あれよあれよと、港に流れ着いた美しい漂着物。それを拾い上げ、じっくり眺めるような、そんな連載にしていきたいと思います。記念すべき第1回目はテキスタイル作家の大類尚子さん(町のみんなからはrui(ルイ)さんの愛称で呼ばれています)。
生地からオリジナルでデザインし、ストールを制作する「ルイヌノ」というブランドを立ち上げ、弛まず、今日もこの地で素晴らしい作品を生み続けています。ルイさんがこの土地に流れ着くまでの、偶然と必然の物語をどうぞ。担当は三根かよこです。
1982年に東京で生まれ、横浜で育ったルイさん。
大学は東京造形大学へ進学。テキスタイルデザイン専攻で制作に明け暮れ、卒業後はテキスタイル会社への就職が決まっていた。
ところが、学生最後の夏のこと。
三宅一生氏率いる『三宅デザイン事務所』で事務のアルバイトをしていた友人の紹介で、新ブランド『me ISSEY MIYAKE』の展示会を手伝う機会を得た。そこから縁あって、三宅デザイン事務所に入社することになった。
「私にとって、それは思いがけない幸福でした。一つのブランドの立ち上げに立ち会えたことも。一流のデザイナーのアシスタントとして展示会や、ディスプレイ制作を経験できたことも。今でも本当に感謝しています」
入社してすぐ、上司が繋いでくれた縁をきっかけに作家活動もスタートさせた。
アシスタントと作家活動の二足のわらじ生活が5年ほど続いた頃、心の中にある想いが浮かんできたという。
「私、本当にこのままでいいのかな、って。会社のみんなには本当に可愛がってもらっていたし、皆で一つのプロジェクトを作り上げるのも楽しかった。でも、私は自分のことを“親にくっついてるだけの子供のようだ”って感じていました。『三宅デザイン事務所』にいたということ以外、なにも持っていない人間になってしまうのが怖くなったんです」
ルイさんは2010年に三宅デザイン事務所を退社し、独立。海外での作家活動をはじめるため、留学準備をはじめた。でも、結果的に留学はしなかった。その年に結婚し、翌年出産。しばらくの間、ほそぼそと作家生活を続けた。
「独立してからは、アーティスティックなレースストールの制作に打ち込みました。その傍らで、ウールストールを作っていました。ウールの方は、前職でお付き合いのあった加工工場さんと遊び感覚で作っていたんです」
ここで、転機が訪れる。
ルイさんはそれらのストールを、編集やイベント、雑貨プロデュースなどを行っている手紙社のお店に持ち込んだのだ。
「思いがけず、ウールストールの方を褒めていただいて。『取り扱ってみようか』と言ってくださったんです」
そこから、作家であれば知らない人はいない手紙社主催の「もみじ市」や「布博」に出店。顧客の反応を通して、ウールストールの魅力を再認識させられた。
「全国で2社しかできない希少な技術がつまったウールストールを、もっと広めたいと思うようになりました」
そんな気づきを得たことで、作家活動の熱量は一層高まっていった。3人の子供を育てながらも、弛まず作品を作り続けた。
プライベートにも大きな変化が訪れた。
長女の小学校入学を控えた2018年3月。もともと好きだった三浦・三崎への引越しを急遽決意した。
「たったの2週間で引っ越してきちゃいました」と微笑む。
「もともと小説家のいしいしんじさんが好きで、10年近く前から三崎にはちょくちょく来ていました。人が生きている“まんま”の感じがいいなぁ、って。長女の小学校入学の手続きを進めつつも『本当にこのまま、ここでいいの?』という気持ちが湧いてきて。そんな折、3月に三浦市の移住イベントがあると知って、思い切って出かけたんです。そこで、色んな人に出会って、もう気持ちが抑えられなくなってしまって。家に帰ってから、夫に『私と子供で、三崎に引っ越したい』って伝えたら、『ルイがそうしたいならいいよ』って言ってくれたんです」
イベントに行った日からわずか2週間。あっという間にルイさんと子供たちは、地元の人の協力のもと三崎に引っ越してきた。夫は東京に残った。その後、話し合いの末、夫婦は別の道を歩むことになった。
「私の活動を応援してくれて、今でも彼とは良き関係です。あの時、夫が背中を押してくれなかったら、私多分、今ここにいないです。今振り返れば、夫に頼って判断を任せて生きている自分が嫌だったのかもしれない」
自分の“ほんとうの気持ち”を誤魔化せない。
そんなルイさんの生真面目さ。
会社を辞めたことも、突然の三崎移住も。ルイさんが“自分を生きる”ために必要だったのだと思えてならない。
最後に「三崎に来てみて、どうでしたか?」と尋ねる。
「三崎に来るまでは混沌としていました。地に足がついてなくて、自分のことがよく分からなかったんです。この街の人たちは本当にキャラクターが濃くて(笑)。『私もひとりの人として、作家として、そんな風に生きたい』って思うようになりました。大勢の中の“誰か”ではなく。私はこういう人間ですって、胸を張って答えられる自分でありたい」
『ルイヌノ』というブランドを背負った作家として、3人の子供を育てるパワフルな母として。大勢の中の“名もなき存在”から、映画のエンドロールで最初に流れてくる“役名がある存在”へ。三崎で出会った仲間との作品づくりや、クラウドファンディングなど、活動はどんどん広がっている。
この場所で、ルイさんは今日も、確かに生きている。
ブランド名:ルイヌノ
ホームページ:ストールブランド「ルイヌノ」
商品を見る・買う:ルイヌノ公式通販サイト(Base) 、ルイヌノ(creema)
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