Concept

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gooone風と共に去らぬ

抗うでもなく、諦めるでもない
そんな第3の道を私たちは探している

逗子で夫婦出版社「アタシ社」を営んでいた私が、三浦半島の先っぽ「三崎」にやってきたのは、2017年のこと。懐かしくって、どこか寂しい雰囲気、そして美しい夕陽に心打たれ、あれよあれよと引っ越してきてしまった。とは言っても、ベッドタウンで生まれ育った私は、土地に対して愛着をもつことを知らなかったし、そういう愛郷心なるものを遠ざけてすらいた。ましてや、自らが先陣をきって「町を盛り上げよう」なんて思いもしない。大勢の市民の内の1人として、ただ静かに暮らしたいと願っていた。

ところが、2回目の夏を迎える頃。「三浦市唯一の出版社として、なにかできないかな」と薄ぼんやり考えるようになっていた。

神奈川県の「市」で唯一「消滅可能性都市」に指定されている三浦市。けれども、週末になると大勢の観光客が来てくれるし、漁業や農業も活気がある。少なくとも、今、衰退の足音はまだうんと遠くで響いているように感じる。

地元で暮らす人の中には「消滅可能性都市」という言葉を聞くことさえ嫌がる人がいる。住んでいる人がいる限り「消滅」なんかしない。私も正直、そう思う。でも、そこで語られている「消滅」を言い換えると、「見慣れた風景はこくこくと変わり、今当たり前に享受できているものを段階的に失っていく」ということではないか。

それは、なんとも悲しい。でも「未来を見据えて、今変わろう」と言われても、体も心も動いてはくれない。人間って、きっと、そういう生き物だから。

「今、なにかしなきゃ」と抗うでもなく、かと言って、「なるようになるさ〜」と放置するでもない。そういう「第3の道」はないのだろうか?

本当はないものを、さもあるように見せても、それはかりそめの三浦・三崎でしかない。できることなら、ここで生きて死んでいった先人たちの歴史や美意識も大事にしたい。

そういう、ぐちゃぐちゃの気持ちを何度もこねくり回して、出した結論は「ありのままの三浦・三崎を差し出す」という、足元に落ちているようなものだった。

この結論を裏返すと、ありのままの三浦・三崎に大いに可能性がある、と感じているということ。「素晴らしいものが隠されたままになっている」のが現状だと、1人の編集者として直感してもいる。

これからこの町に観光に来る人には、三浦市が抱えている不安なんて一切無視して、三浦・三崎をとことん楽しんでもらいたい。(これだけ語っておいてなんですが)

そうやって外から訪れてくれる人たちが“いい体験”を積み重ねることによって、この町の未来が少しは変わるかもしれない。まぁ……、変わらないかもしれない。未来がどうなるかは横に置いて、私たちができることに集中したい。

三浦・三崎は、そう簡単には衰えない。
この町には、そういう強さがある。
私はそう信じて、goooneを創刊する。

gooone編集長
三根かよこ
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