2020.08.23

築100年超えの泊まれる酒屋「山田屋酒店」で、じっくり味わう三崎時間

  • B&B・ゲストハウス
  • 宿泊
  • 三崎港周辺
  • 三崎口駅
築100年超えの泊まれる酒屋「山田屋酒店」で、じっくり味わう三崎時間

三崎港のバス停を降りると目の前にどしんと佇む粋な看板建築。明治から続く老舗「山田屋酒店」だ。1階が酒屋、2階にゲストハウスという斬新なスタイルで経営をするのは6代目の山田直治さんとスタッフの黄川田亨さん。築90年を超える立派な建て構えは訪れる人の足を留め、そこに交流を生ます。三崎の街をぎゅっと濃縮したかのような心地良い空間がどのようにつくられてきたのか、編集部の小林璃代子が伺ってきました。

肌で感じる、三崎の歴史

「山田屋酒店」の創業は明治時代にまで遡る。かつては「万屋(よろずや)」の名で生活必需品を広く取り扱い、三崎の遠洋漁業を支える役割を担っていた。母屋は昭和初期に建てられた木造の商店建築。現存する漆喰の蔵はなんと明治のもの。きらきらと太陽に照らされる瓦屋根、店前の腰掛椅子が港町にしっくりとくる。

「いらっしゃーい」と迎えてくださるのは6代目の山田直治さん。長年にわたりこの山田屋酒店で商売を続けてきただけあって、その笑顔は天下一。柴犬のはるちゃんも一緒にお出迎え。あたたかい季節には店先で来る人を和ませてくれる、山田屋の看板犬だ。

笑顔いっぱいの山田さん
看板犬のはるちゃんの定位置はここ

店内にはセレクトされた美味しいお酒がずらりと並ぶが、それだけではない。タバコや調味料、鎌倉にある衣料店とコラボしたオリジナルグッズなど、多様な品揃えで万屋の伝統をしっかりと受け継ぐ。店のあちらこちらに共存する古さと新しさに胸が高鳴る。

宿としての再生、ゆったりと流れる時間

代々酒屋を営んできた一家が住まいとして利用してきた母屋の2階が、ゲストハウスとしてリニューアルしたのは約7年前。丈夫な骨組みや繊細な彫りの技術を活かし、居心地の良い広々とした宿へと生まれ変わった。

1日1組、最大8名まで宿泊が可能。2部屋を貸切できるということもあり、家族連れや地元の方の紹介での利用が多いのだそう。海へのアクセスが良く、釣りやマリンスポーツをする方も訪れる。港街でのレジャーを満喫したのち、友達同士でゆったりと過ごす時間も素敵かもしれない。

部屋のあちらこちらに当時の職人技が光る。繊細な磨りガラスや彫刻は現代では再現ができない貴重なもの。天井にも当時の面影が残る。

お風呂の窓からは三崎港が眺められる。ゆっくりお湯に浸かりながら港を眺めるのもいい。

建物は古いが水回りはきれいにリノベーションされている。

スタッフの黄川田亨さんに宿の魅力について伺うと、「広い、贅沢」だと笑った。確かに贅沢な空間だ。港のすぐそばに位置する歴史ある建物、そこにはふんだんに陽が差し込み、日常の延長線上にあるような究極の休息を体験できる。

大きく縁取られた窓辺には、心地よい海風が通う。きっと昔から、この匂いとあたたかさは変わらないのだろうなどと想像しながら三崎を感じる時間。

ローカルな場で、談笑を楽しむ

山田屋酒店の1階にはテーブルと椅子が置かれており、購入したお酒を店の一角でたしなむ、いわゆる「角打ち」ができる。お酒を片手に、いつも気さくにお話してくださる山田屋の黄川田さんや地元の方とおしゃべりを楽しむのが三崎の午後の、通な過ごし方。

おすすめは、山田屋酒店が考案した三崎オリジナルの「ミサキ ポートエール ビール」だ。船の舵が描かれたパッケージには港町らしさを想起させられる。

【のみすけからも一言】

昼間っから港の前でお酒が飲めるなんて、この上ない幸せだなあ。ヒッく…。

ガラス戸の向こうには三崎港と道を行き交う人々。気持ちのいい外の明かりがやわらかくさしこみ、ゆったりとした時間が流れる。自然と話が弾んでしまう、三崎特有の不思議な居心地良さにまた足を運びたくなってしまう。

まちの景色としての、山田屋酒店

今年4月、山田屋酒店は有限会社三浦レンタカーが運営する「みうらリゾートトゥクトゥク」の貸し出し拠点という新たなサービスを試験的に始めた。時代に合わせて変化し続ける老舗酒屋の、これからも変わらないものとは何なのだろう。
黄川田さんは「建物の外観は、まちの景色として残していきたい。昔から変わっていないのを見ちゃってますから」と語る。
三崎港のバス停を降りて初めに目がつく看板建築。このまちの歴史を下町商店街入り口で物語る山田屋酒店で、ぜひ本物の三崎を味わい尽くしてみてほしい。

Information

店舗名:山田屋酒店

所在地:神奈川県三浦市三崎4-8-10

お問合わせ046-881-0220

受付時間:9:00~21:00

チェックイン:15時〜

チェックアウト:10時

駐車場:なし

お支払い方法:現金のみ(先払い制)

料金: 大人(中学生以上) 1泊1人4,000円、子供(小学生以下) 1泊1人2,000円

※追加料金:一名様のみでのご利用+1,000円、金土曜祝前日ご利用 1人につき+1,000円

・冬季12/20~1/10

・GW4/28~5/12

・夏季7/14~8/31

 1人につき+3,000円

※料金は先払い制です。(消費税別途)

客室数:1室

ホームページ酒宿 山田屋

小林 璃代子この記事を書いた人小林 璃代子
2000年生まれ、横浜育ち。横浜市立大学で社会学を学ぶ2年生。人と人がつながるきっかけに興味を持ち、場づくりや冊子制作を行う。横浜橋商店街のフリーペーパー「いきな下町商店街」の編集や、webメディアで記事を執筆している。三崎との出会いは2018年秋。大学に入ってからは「三浦半島研究会」の一員としてまちの方と関わっている。

Other Articlesその他の観光の記事

Page top