2022.07.15

例えば、かんぴょう巻きにオリーブオイル。「ao」は初めての美味しさに出合える場所

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例えば、かんぴょう巻きにオリーブオイル。「ao」は初めての美味しさに出合える場所

京急電鉄の三浦海岸駅から歩いてすぐ。
人気店「ao」はぱっと見たところ、感じのいいビストロかトラットリアといった趣き。しかし、料理を一口味わえば、そんな月並みなイメージはすぐに覆される。

肩ひじを張っていなくて、細部までさりげなく気が利いていて、どれも抜群にセンスが良い。ナチュールワインのラインナップも三浦随一。少しだけ特別な日に行きたくなる。ここはそんな料理店。

地元で愛される個性派の名店の秘密を探ってきました。
本記事の担当は瀬木広哉です。

多彩な味、食感のハーモニー「三浦野菜サラダ」

三浦野菜サラダ(950円)

みずみずしい葉もの、ほどよく火の通った根菜類。野菜は直売所などで仕入れるほか、農家の常連さんからいただいたり、買ったりすることもあるそう。美しい彩りは、目をも楽しませてくれます。

しっかりと味のする野菜に、塩気の効いた濃厚なドレッシングがぴったり。一般的なサラダに物足りなさを感じる人でもこれなら満足しそう。〝脇役〟感のまったくない、充実のひと皿です。

ワインの最高のお供「鰯のマリネ」

鰯のマリネ(750円)

ワインを楽しみたい人におすすめ。ピンクペッパー、刻んだ紫玉ねぎなどの味のアクセントと、酸味、塩見のバランスが絶妙。オリーブオイルの香りがなんとも爽やかです。

ありふれたメニューも「ao」の手にかかると特別な一皿に。白ワインに合わせたら最高です。

口の中でほろほろと溶けていく「稚鮎のフリット」

稚鮎のフリット(950円)

「ao」には通年メニューのほか、季節限定メニューも多い。春から初夏の短い期間にしか味わえないのが「稚鮎のフリット」。

カリッとした衣をかじると、稚鮎の芳醇な香りが口に広がり、柔らかい身はほろほろと溶けていくよう。頭から尻尾まで食べることができます。やみつきになること間違いなし。ぜひ熱々のうちに!

編集部感動!意外すぎる逸品「かんぴょう巻き」

かんぴょう巻き(2本)とオリーブオイル(750円)

「ao」のかんぴょうの巻物はそれ単体でも美味。しかし、オリーブオイルにちょんちょんとディップして口に運んだ瞬間、新しい扉が開きます。

甘く柔らかく煮たかんぴょう、口の中でほどよくほどけていく酢飯にオリーブオイルの香り。これこそが、かんぴょう巻の〝完成形〟では? と思えるほど、別次元の美味しさ。(取材に行った編集部一同、心の底から感動してしまいました)

どれだけお腹いっぱいでも、これだけは必食です。

センスの良さはスイーツにまで「バスク風チーズケーキ」

バスク風チーズケーキ(450円)

カウンターの向こうに置かれたホールケーキ。気になって注文してみると、これがまた美味しいこと!バスク風チーズケーキは、濃厚なチーズの味を活かしながら、くどさはない。少々膨れたお腹にも無理なくすんなりと収まってしまいます。

センスの良いお店は何を頼んでも美味しい。

持ち帰りのみの裏メニュー「卵焼き」

卵焼き(1000円)

かんぴょう巻きなどについてくる卵焼きは、事前予約すればお土産用に買うことができる。甘くて出汁が効いたそれは、理想的な「お寿司屋さんの卵焼き」。幸せな味です。

しかし、なぜ「ao」ではこうしたお寿司屋さんメニューまで揃っているのか?
その理由は、お店の歴史にありました。

実はあたしも昔からの常連。ここは以前は◯◯だったのじゃ……

地元で愛された寿司屋さんが大変身

店頭に立つ木川賢太さんと奈津貴さん

「ao」を切り盛りするのは木川賢太さん、奈津貴さんのご夫婦。共に三浦市の出身で、2018年2月の開業以来、少しずつ試作してはメニューを増やしてきたそうだ。

その前年まで、この場所にあったのは「鮨処 紀川」。賢太さんの父親である信夫さんが開業し、約30年にわたって地元で愛されたお寿司屋さんだった。

「親父はこれから先の寿司屋は厳しいと考えていたんです。実際、寿司屋を継ぐのであれば、相当な覚悟が必要です。考えた末、僕が修行に出たのは、都内のフランス料理屋など洋食系のお店でした」

店内の様子。入り口すぐのカウンターには、かつての寿司屋さんの面影が残る
奥にはテーブル席が。心地良く過ごせるよう、余裕のある配置に

そんな父親が一線から退くことになりお店を改装。10年ほど都内で腕を磨いた賢太さん、奈津貴さんで「お酒を楽しんでもらえるお店を」と「ao」を新装オープンさせた。時折、厨房には信夫さんの姿も。

ラベルを見るだけでも楽しいワインの数々、写真はほんの一部

最初は「ジャケ買い」したというナチュールワインに魅せられ、今ではラインナップのほとんどを占める。三浦でここまで揃うお店はほかにありません。

多彩なメニュー誕生の秘密を聞くと、ちょっとシャイな賢太さんは「強いて言えば、こだわりがないのがこだわりなんです」。夫婦で色々なお店に食べに行っては、美味しいと思うものからヒントを得てきた。

「自分たちが『こういう店がほしい』『こういうものを食べたい』と思う。それがないと始まらないですよね」

厨房に立つ賢太さん。もくもくと料理を作る
ケーキ類は奈津貴さんが担当

聞くと、「ao」の客層は観光客の若者から、家族連れ、寿司屋時代からの常連さんまでさまざま。誰が来ても、その人なりの過ごし方ができるお店を──。そう考えた結果、今のような多彩なメニューができあがったそうだ。

お客様に本当に美味しいと思うものを提供したい。
そのためには誰よりもまず、自分たちが本当に美味しいと思うものを作ろう。魅力的な料理の数々を支えるのは、そんなまっすぐなご夫婦の姿でした。

奇をてらうことはなく、しかし、美味しさを追求するためには大胆なアレンジも加える。そんな料理をぜひ一度味わってみてください。きっと何度でも足を運びたくなりますよ。

※お料理の価格は2022年6月時点のもの。変更の可能性があります

Information

店舗名:ao(あお)

所在地:神奈川県三浦市南下浦町3257−6 

お問い合わせ:046-854-8477

営業時間:1200-1430 1700-2100

定休日:日月

駐車場:あり

お支払い方法:現金、クレジットカード各種

席数:17席

瀬木 広哉この記事を書いた人瀬木 広哉
1978年生まれ、兵庫県出身。元共同通信記者。2022年から横須賀に居を移し、三浦の出版社「アタシ社」で編集者として働きはじめました。たまに「本と屯」や「雑貨屋HAPPENING」のお店番をすることも。少しぼーっとしているように見えますが、心の中ではシャキッとしています。たまに路地裏を高速で移動している人がいたら、猫を追う私です。

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