2022.11.10

アジア家庭料理の名店、ここに誕生! 姉妹の食への思いがつまった「たべごとや みなと」

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アジア家庭料理の名店、ここに誕生! 姉妹の食への思いがつまった「たべごとや みなと」

タイ風照り焼きチキン「ガイヤーン」、自家製味噌醤やライム塩でいただく水餃子、旬の魚を用いたエスニック南蛮揚げ──。地の素材にこだわって作られた料理は、どれもハッとさせられる新鮮な味わい。そうでありながら、同時になんだかホッとする。スパイスの効いたアジアご飯なんだけど、不思議ととっても優しい。

港町の一角で姉妹が切り盛りする「たべごとや みなと」が提供するのは、日本の家庭料理とさまざまなアジアの料理を掛け合わせた〝ジャパニーズ・アジアンテイスト〟。新しいのに、懐かしい。そんな美味しくて温かいひとときを、ぜひここで!

(文・取材:瀬木広哉 写真:三根かよこ)

昭和レトロな看板が目印

商店街を歩いていると、ふと目に入る昭和レトロなかわいい看板。これを目印に路地を入ると「たべごとや みなと」はある。築80年を超すという建物はかつて、地元の名士らも通う家庭料理屋さんだったそう。

切り盛りするのは、柴崎朱里さんと岩崎楓さんの姉妹。「朝めし あるべ」でのトライアルキッチンを経て、2022年5月にオープンさせた。

岩崎楓さん(左)と柴崎朱里さん。柴崎さんが3学年お姉さん

棚や照明、小物は姉妹が古道具屋などを何軒も巡って集めたもの。食器類は地元の飲食店から譲り受けるなど、大部分が「もらいもの」。必要なリノベーションは施しながらも、壁に使われていた板材をカウンターに用いるなど、古き良き時代の風合いも残されている。

まずは、気になる料理を一挙にご紹介します。

旬の食材を用いたお惣菜も充実。テイクアウトもできます

ガイヤーン(タイ風照り焼きチキン)

味の決め手は、手作り梅ジャムやにんにく、パクチーの根、白胡椒などを用いた〝秘伝のタレ〟。これに一晩漬け込み、奥まで味の染みたチキンはぷりっとしているのに、噛むとほろほろと口の中でほどけていく。自家製のスイートチリソースに軽くディップして食べると、より華やかな味わいに。

ランチタイムには「ガイヤーン定食」も

初めて来店する人は必食の一皿!
予約すればテイクアウト用の「ガイヤーン弁当」も購入可能です。

チキンは冷めても柔らかくておいしい。このほか、ケータリングも応相談とのこと

特製水餃子 3種のタレ付き

もちもちとした食感がたまらない水餃子。それだけでも十分に美味しいけれど、3種のタレを使い分けることで、楽しみ方が一気に広がる。

「自家製味噌醤」は自然栽培の大豆をすり潰し、米麹をまぜて熟成させたもの。水餃子と味噌。ありそうでなかった組み合わせだけど、これが合う!
「レモングラスとえびのラー油」はほんのり甘く、アジア系のご飯が好きな人にはたまらない風味。そして、個人的におすすめなのは「ライム塩」。ぴりっとした塩とライムの爽やかな香りが、素材本来の美味しさを引き立てる。

レモングラスもつ煮 サンバルソース添え

もつと大根に自然栽培されたレモングラスを加えて煮込んだもの。塩、胡椒、砂糖というシンプルな味付けとは思えないほど、じんわ〜り染みる味。

そして、最高の働きをするのが、これまた自家製のサンバルソース。トマト、えびの発酵調味料、赤唐辛子、赤たまねぎ、にんにくで作られた甘くてスパイシーなソースは、ビールや白ワインといったお酒にもぴったり。
汁までぜんぶ飲み干すこと推奨の一皿です。

このほか、旬の魚を用いたニョクマム唐揚げも編集部のおすすめ! 魚介と野菜の美味しい三浦ならではの〝ここでしか食べられない味〟です。

デザートは隠れた人気メニュー

食後におすすめなのが、時期によって変わるデザート。

この日は、豆乳と5種のスパイスで作られたゼリー。胡椒、カルダモンがかかった上に、ココナッツクリームがとろり。甘さもありつつ、ちょっとスモーキーな大人の味です。かわいいゼリーの型は、2人の祖母の家にあったものだという。

このほか、クラフトビールや自然派ワインなど、アルコール類も充実しています。

全国から美味しいクラフトビールを厳選。缶のデザインもかわいい
ベトナムの「333(バーバーバー)」など定番のアジアンビールのほか、「赤星」のサッポロラガーも

夏季には自家製の「青みかんジン漬け」と「秩父梅のスパイス漬け」を用いたソーダも販売。どちらも汗をかいた身体に沁み渡るような、さわやかな香りと味わい。

レトロなグラスも楽しみの一つ

このほか、お茶は「ハス茶」「桂花緑茶」「茉莉花茶」「雲南紅茶」の4種を用意。食事や飲み物のメニュー数も多すぎず少なすぎず、ちょうどいい。休憩がてらお茶でも飲んだり、小腹を満たしたり、仲間とわいわい食卓を囲んだり、さまざまな利用の仕方が可能です。

他にも美味しいご飯が目白押しで、とても紹介しきれないよお……ぜひお店に行って自分のベストメニューを見つけてくれ!

横浜、東京、そして三崎へ

朱里さんと楓さんは横浜生まれ。共に東京都内の飲食店でホールやキッチンでの経験を積んできた。

「祖母が三崎の老人ホームに入所して、『三崎っていいところだね』とみんなで話していたんです。そうしたら、母がいつの間にか三崎に家を買っていて。私もちょうど出産したタイミングだったこともあって、家族でこっちに越してきました」と朱里さん。

エプロンの刺繍にもさりげなくアート色が

もともと横浜での飲食店開業を考えたこともあった姉妹は当初、居酒屋を始めたいと考えていたそうだ。

「だけど、トライアルキッチンを続けるうちに、どんどんやりたいことが明確になってきて。たどり着いたのが〝親しみやすいアジア料理〟でした」

太陽みたいな姉、完璧主義の妹

開店前の料理の仕込みはふたりで行い、開店後はホールを主に朱里さんが、キッチンを主に楓さんが担う。いわく、姉妹で「性格が全然違う」のだとか。

キッチンに立つ岩崎楓さん

「楓ちゃんは仕事に対してまっすぐで、完璧主義。いろんな料理の要素を組み合わせるのがすごく上手だと思う。うちで看板になっているアジアご飯は、楓ちゃんの考えたメニューが多いですね」と朱里さん。楓さんは「姉はとにかくコミュニケーションが上手。人懐っこくて、誰に対しても自分を開いていける。私にはとても真似できない」。

笑顔で場を明るく照らす朱里さんと、真剣な表情で調理に集中する楓さん。それでいて息ぴったりな姉妹の姿も「みなと」名物の一つ。

収穫も自分たちの手で

幾度もベトナムを訪ねて料理を研究してきた楓さんの経験や、オーガニック食料品店で野菜や調味料について学んだ朱里さんの体験も「みなと」の料理に活かされている。

ふたりがこだわっているのは、地元の食材。地元の農家さんに赴き、自分たちで収穫もする。

「こんなに地のものがすぐ手に入る環境は、東京にはきっとないですよね。三崎だからこそ、自分たちの理想に近いお店のあり方を実現できていると思います」(楓さん)

ヘルシエという品種のオクラも収穫。スーパーで見るようなオクラと比べ、粘り気が強いのだそう

自然農の考え方にも共感

よく通う農園の一つが、三浦では珍しい自然農を実践する「KHファーム」。三崎に引っ越してきた朱里さんが援農体験に参加したのを機に、その考え方に共感し、今でも収穫させてもらいに訪れる。

農園主は陶芸家でもある井上惠介さん。
自然農を実践する畑には草がたくさん生え、一般にイメージされるそれとはちょっと違う。
「種と苗についた土以外は、外部のものは一切入れない。収穫したもの以外はすべて土に戻す。できれば耕しもしないんです」


農業器具で耕すと微生物などがつくった自然の通気孔を壊してしまう。一時的に〝生産効率〟は高まるかもしれないが、長期的に見れば土は痩せていくのだという。

この日はレモングラスやホーリーバジル、ニラなどを収穫。どんな食材を収穫できたかによって、お店のメニューは細かく変わる。当然、季節ごとにも変化していく。

そこにあったのは、なんだか幸福な光景でした

「食べること」の全てを大切に

「たべごとや みなと」の「たべごと」とは、食にまつわる全てのことを意味する、九州地方の言葉なのだそう。

「いい言葉ですよね。私たちも一次産業からお店で料理ができるまでの全ての過程を大切にしたい。だから、できるだけ地元の農場さんや農家さんと直接繋がって、現場も見せていただくようにしています」(朱里さん)

とっても仲の良い姉妹。たまに喧嘩もして、言いたいことを遠慮なく言い合うのだとか

一皿の料理の背後には、たくさんの人たちが関わる「たべごと」がある。そんなことに思いを馳せながらじっくりと味わって……と思いつつ、湧き上がる食欲に勝てず、あっという間に平らげてしまう。

今後ますます人気店になっていくこと間違いなし。
お昼はマグロ丼を食べたし、夜はちょっと方向性を変えたいな──。そんな方はぜひ足をお運びください!

imformation

店舗名:たべごとや みなと

所在地:神奈川県三浦市三崎2-16-3

お問合せ046-876-6370

営業時間:ランチ 11:30〜15:00、ディナー 18:00〜22:00

定休日:木金土のみ営業

駐車場:なし

お支払い方法:現金、電子マネー、3千円以上はクレジットカード決済可

席数:15席

貸切:応相談

お店の場所はこちら

瀬木 広哉この記事を書いた人瀬木 広哉
1978年生まれ、兵庫県出身。元共同通信記者。2022年から横須賀に居を移し、三浦の出版社「アタシ社」で編集者として働きはじめました。たまに「本と屯」や「雑貨屋HAPPENING」のお店番をすることも。少しぼーっとしているように見えますが、心の中ではシャキッとしています。たまに路地裏を高速で移動している人がいたら、猫を追う私です。

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